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前回、「不味いもの」というネガティブな要素で、
どこまで記憶を呼び起こすことができるのか、
実験してみました。

で、やってみたら「案外出るじゃん……」
ということになったわけです。

ということで、
前回は「ご当地の麺」にフィーチャーしましたが、
今回は「生活」に焦点を絞ってみたいと思います。

 

味噌ラーメン

大学1年生の4月。

それまで実家では帰宅すれば
夕飯が出てくるという生活から、
自分でどうにかしなくてはいけない
という生活に移行して、
まさに途方に暮れていた時期のこと。

スーパーでその安さにつられて、
スープなしのインスタント麺
(確か1食40円とか)を買ってきた私。

冷蔵庫には味噌があったので、
それをもとに味噌ラーメンをつくることにしました。

当時は味噌汁のつくり方も知りません。

でも、なぜか引っ越しの際に
お袋が置いていった味噌があったというわけです。

取りあえず、大量のお湯を沸かせて、
そこに味噌を少量、
そしてざく切りのキャベツと
人参と玉ねぎをぶち込み、
最後にインスタント麺を投入しました。

なんとなくビジュアル的には
味噌ラーメンにも見えなくもないですが、
漂うコレジャナイ感。

そして。

生煮えの野菜。

ダシの入っていない味噌のお湯。

味のしない麺。

……。

……。

その不味さは、
そのまま東京駅に行き
新幹線に飛び乗って帰省したいほど
突き抜けていました。

第五の味覚「うまみ」の重要性を痛感した一件でした。

スクランブル餃子

小学生の頃のことです。

親父は「男子厨房に入らず」派。

それでも年に何回かは
お袋がいない日があります。

たいていは外食で賄うのですが、
その日に限って
なぜか餃子をつくるという暴挙に出てくれたわけです。

大人しく近所のラーメン屋に行けばいいのに、
お袋が下拵えした餃子
(当時は冷凍餃子がまだなかった気がします)を
親父が何の予備知識もないまま、
焼き始めました。

変な焼き方をしているのに、
途中水を入れるという行為だけは
しっかりと憶えていたので、
結果として、グチョグチョで
ベシャベシャな皮と餡が入り混じった餃子が
できあがったのでした。

さらに、取りあえず火は通そうということになり、
その状態からさらに焦げが加わることになり……。

「餃子のタレを付けて食べれば同じだ」と豪語する親父に、
小学生の私は何も言えませんでした。

親父が餃子と言い張る物体は、
一度咀嚼した餃子といった感じで皿に盛り付けられ、
そのゲル状の物体に
タレを付けて食べさせられる羽目になったのでした。

「んなことを言うなら、
世の中全部、流動食でOKじゃん!」
なんて生意気なことが言えるようになるのは、
まだ当分先だった幼少の頃の話です。

イナゴの佃煮

小学校の頃、
土曜日に友達の家に遊びに行きました。

その友達の家には、
おばあちゃんがいて、
いつも私に優しくしてくれていました。

その土曜日にも
おばあちゃんがそいつと私に
お昼ご飯をつくってくれました。

穏やかなおばあちゃんです。

で、その優しくて穏やかなおばあちゃんが
つくったお昼ご飯に、
見慣れない小鉢がついていました。

よく見ると、虫。

さらによく見ると、イナゴ。

コオロギ君みたいなのが、
飴色に煮られている……。

「やべー、この家では普通に虫を食べているんだ……」

で、おばあちゃんは
優しくお膳の脇で微笑んでいます。

とてもそんなおばあちゃんの好意を
踏みにじることなんてできない……。

私はおばあちゃんに
躊躇している素振りも見せたくなかったので、
一気呵成にイナゴを頬張りました。

「はは~ん。イナゴですか?
こいつはオツな一品ですねぇ」
という無言の演技をしているつもりです……。
(小学生として精一杯の演技の図……)

正直なところ……、味はあまり憶えていません。

虫を喰ったという衝撃体験が味覚を上回った感じです。

取りあえず半分以上食べた時、
友達が自分のおばあちゃんに喚き散らし始めました。

「うげ~、何これ?虫?気持ちワリ~、俺いらない!」と友人。

「あれ~、やっぱりムリかねぇ?
でもフク山君は食べてるよ、偉いねぇ」とおばあちゃん。

なぜに友人より先にイナゴ君に手を付けてしまったのか。

なぜに正直に「虫はちょっと」と言えなかったのか。

ヒク付きながら、友人とその祖母のやり取りを見つつ、
残りのイナゴを食べ続ける小学生時代の私なのでした。


以上、生活の中で遭遇した不味いものの記憶でした!

実は……。

この不味いものの記憶、まだ出てきそうです。

ということで、
いったんこの辺で止めないと、
止めどもなくなってしまいますので、
これにて終了です。

 

この検証により、
「不味いもの」というネガティブな要素でも、
十分に記憶を辿ることができました。

なので、自分史を書かれる際には、
ぜひ「不味いもの」というキーワードを
入れられたらいかがでしょうか。
(……んなもの、わざわざ入れねーよ!)

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