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仏門に入った友人が、先日拙宅へ遊びに来ました。

一緒に日々いろいろと行動していたのはもう10数年も前の話です。

その後、彼は何年もかけて僧籍を取るべく修行(というのかどうかわかりませんが……)して、最近とあるお寺の住職になりました。

私からしてみたら、そもそも住職や宗教者である人が友人になったわけではなく、友人が住職になったわけで(ややこしい話ですが)、宗教とは距離を置いた忌憚ない話も含めて、いろいろな話をすることができるというわけです。

彼と私の間柄は、遠方からはるばる拙宅に遊びに来る手土産に、彼が「まったく冷えてないビールを持ってくるぐらい」と言えば、いかに気の置けない関係かご想像がつくと思います(いや、ホントにぬるいビールほど切ないものはなく……)。

そして、そんなぬるいビールと粗餐で、短い時間でしたが楽しい宴会を終わらせ、彼は帰途につきました。

 

彼とはいろいろと話したのですが、正直あまり憶えていません。

酔いのせいでしょうが、惜しい話です。

なんせ僧籍を持っている人と“日常的”に話せることは中々ありませんから。

 

ということを考えた時、ふと思いました。

今、宗教は“日常的”なのかと。

 

私は子供の頃、都市部から都市部への引っ越しを繰り返して、土地に根付いた文化と触れ合う機会がとても希薄でした。

そして、そんな生活でしたので、家に仏壇も神棚もありません。

そのため、私にとって“田舎”の代名詞は「仏壇や神棚がある家」だったくらいです(もちろんこれが偏見であることは、今では知っています!念のため……)。

 

なので、私にとっての宗教は“冠婚葬祭で特定の機能を果たすもの”であり、それ以上でも以下でもありません。

明らかに“非日常”においてのみ、出くわすものという感じです。

 

正直なところ、この位置付けで困ったことは現時点では一度もありません。

と言いたいところですが、一度だけ困ったことがあります。

 

それは、実家で父と「生前整理」を行った時のことです。

父と様々な角度から「親の家の片づけ」や「生前整理」を行ったのですが、その中で「どのような葬儀を望んでいるのか」、「どのような供養を望んでいるのか」を聞くシーンがありました。

 

炬燵でノートを広げて父にいろいろとヒアリングしていたのですが、この時ほど話が堂々巡りして行き場に困った時はありませんでした。

といいますのも、父は自分の実家を出た後、実家のお墓は兄(私の伯父)に任せています。

そして、前述したとおり、いわゆる転勤族として日本を転々としていたため、これといった宗教・宗派・特定のお寺(菩提寺や檀那寺)といった発想が希薄だったのです。

 

唐突に息子にそんなことを聞かれても困ってしまうというわけです。

それも非常によくわかります。

一応、話の前振りは数日前にしていたのですが、父にしてみれば、数日間の時間はあっても回答が非常に難しかったのでしょう。

まったく答えが出ないまま、二人の前の湯呑み茶碗が何度も空になりました。

 

ただし、もしこの生前整理を行っていなかったら、「いつか」、たぶんその炬燵で二人であーでもないこーでもないと話し合って困った時の100倍は家族が困っていたと思います。

 

結局、どの選択を父がしたのかは伏せさせていただきますが、間違いなくあの時に話をしておいてよかったと思っています。

恐らく今後その選択は変わることもあるでしょう。

でも、現状を把握するということと、今後に対してどのようなことが足りないか、ということを父と私で共有できたことは非常に有意義でした。

 

さて、ここで前段の話に戻ります。

もしも“日常的”に宗教がない、もしくは希薄なご家族であれば、「生前整理」でご葬儀のことをお話し合いになる機会は、早ければ早いほどいいはずです。

仮に現在の宗教というものが、多くの方にとって“葬祭の特定の機能”だけの存在であるとすれば、間違いなく“その時”に選択を迫られることになるはずです。

そして、“その時”まで話し合わなければ、家族の誰も確証を持たないまま、ご葬儀やご供養を営んでいかなくてはいけなくなってしまうのです。

 

生前整理には様々なアプローチがありますが、今回の件はその一つのアプローチとなります。

恐らくご自分もご両親も忌避しがちなことであるとは思いますが、私と父の事例をご参考いただき、もしご家族でこのことを棚上げしたままだったら、どうなってしまうのか想像してみてください。

そして、本当にご家族にとってどのような形が最良なのか、考えたり、話し合ったりするべきなのではないでしょうか。

 

いつか今回のブログの感想を“ぬるいビールを持ってきた僧侶の友人”に聞いてみたいと思います(と言えば、二度とぬるいビールは持ってこないでしょう笑)。

そして、できればその感想をこのブログでもご紹介したいと思います。

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